文藝春秋 芥川賞発表三月特別号

金原ひとみ 蛇にピアス

 綿矢りさ蹴りたい背中」よりも私は「蛇にピアス」の小説の広告としてのタイトルとして秀逸だと思います。「蹴りたい背中」は象徴としては申し分ないタイトルですけれども、「蛇にピアス」にさらにいろいろな付加(身体改造?)を想像できる部分がよし。なおかつ蛇さらにピアスと言うインパクトある言葉で人の目も惹きつけていますよ。
 純粋な起承転結を感じながらなんだかなぁと思うのはやはりそのサスペンス仕立て。しかもあおっているのはあくまで主人公のルイだけ。その個人的なサスペンスが最後の最後で「わぁ、身内が犯人だったかもぉ!」ってなんじゃそりゃ。その因果関係の狭さではなく20枚の論文最後5ページで力尽きたような失速感。事件を起こすと言うことの是非でも必要性の有る無しでもない、結局その恋人が殺された事件の重要度って主人公ルイのなかでどれくらいなのかがよくわからなかった。