世界文学全集 別巻7

レマルク 山西英一訳 凱旋門

 フランスはパリのビストロでカルバドスを飲んで食事している間に人が死んだり恋をしたりナチスに見つかってスイス送りになったり、ほんとにカルバドスを飲む間にいろいろ進むお話で、胃がもたれそうなそれでいて憧れてしまうかっこよさが内在しています。
 主人公ラヴィックが助けた女ジョアンがラヴィックの首をしめそうで、大きな事件が結果的に起こらなかったスリルというかジョアンに対しての苛立ちむかつきが本を読み進めていく上で障害でもあり活性剤でもありました。不思議とそういう迷惑女が戦争前夜の不透明な日常生活の象徴のような気がします。それは思い過ごしかもしれませんが、霧だとかカルバドスだとか娼館の絶妙な配置は計算し尽くされた対戦前夜の表現です。