文藝春秋 芥川賞発表三月特別号

綿矢りさ 蹴りたい背中

 恋愛とも友情ともつかない感情が主人公ハツとにな川の間に生まれるわけですが、ハツもその友人絹代もにな川も高校一年生なんです。高校一年生の一学期中間テスト前なんです。中学時代のグルーミングに苦痛を感じて高校生になってからはクールであろうとするのは別にかまわないのですがやはり恥ずかしさを感じずにはいられません。この一人称でありながら俯瞰視点が恥ずかしさの原因であり、グルーミングかっこ悪いって一人称で言いながら俯瞰視点で他人を冷静に分析するこのちぐはぐさ。それって結局一人称じゃん、なにその中途半端な俯瞰。そんなことされるとグルーミングでも別にいいじゃんかよっていうのを思い出しちゃうじゃん。しかも時代考証が私たちの高校生と合わせてあるから中途半端にアナログでそれでデジタル。これはファンタジーの領域だよね。
 狭い視野とも違う奇妙な高校生像を今から高校生になる、例えば私の妹なんかが読んじゃうと「大学受験?ハッ。っていうこのスタンス。」って言いそうだよね。
 私個人の意見としてはグルーミングしようがしまいがそれないりに楽しさを形成していることに変わりはないんだからさー、もっとグルーミングしないならしないの楽しさはどこいったんだろうねー。っていうスタンス。